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2018年5月11日金曜日

『お金をかけずにシックなおしゃれ 21世紀のチープシック』「おしゃれであっても中身のない人は魅力的じゃない」(あるいはギャルソンを着た悪魔)公開

⑥おしゃれであっても中身のない人は魅力的じゃない (あるいはギャルソンを着た悪魔)
「おしゃれであっても中身のない人は魅力的じゃない」と、私は考えています。そう考えるに至ったエピソードをご紹介します。
私はファッションの専門学校にも行きましたし、卒業後は、一人のデザイナーが率いる日本のブランドにも、そしていわゆる大手アパレル企業にも在籍したことがあります。その間、ファッションが好きなおしゃれな人たちをたくさん見てきました。
その中で特に印象的だった女性が一人います。
彼女は大手アパレル企業で、私が所属するブランドのチーフデザイナーでした。当時最もはやっていたブランドのコレクションで発表されたスタイルをいつも身にまとい、毎日違う服を着ていました(自分のお給料では買えないので、親に買ってもらっていたようです)。後に私は彼女のことを『プラダを着た悪魔』にちなんで「ギャルソンを着た悪魔」と命名しました。
彼女のことを何も知らずに、ただそのルックスを見ているだけでしたら、おしゃれな30歳の女性でしょう。上から下まで最新流行の服を着ています。コレクションで発表されたスタイルそのままです。誰も文句のつけようがありません。
けれどもそんな彼女は、上司には媚びへつらい、丁寧な言葉遣いをするにもかかわらず、部下に対しては乱暴な言葉遣いで、名前は呼び捨て、敬意を表するということがありません。また、役員でもないのになぜか昼間から出勤し、夜遅くまで会社に残ります。彼女はチーフデザイナーですから、彼女の決裁印がないと進まない仕事が多く、部下は彼女の出勤を待ち、彼女より先に帰ることができません。
そんな彼女はターゲットに決めた部下にハラスメントを繰り返します。例えば、理由もなくいきなり多くの人の面前で叱責し始めたり、解決方法がないような無理難題をターゲットの部下に押し付けたりします。
そうかと思えば、いきなりヒステリーを起して泣き叫んだり、仕事中にもかかわらず、煙草を吸うためにどこかへ消えます。それだけではありません。部下に仕事を依頼しておいて、その部下が仕事ができ上がったことを彼女に報告すると、上がった仕事をすべてボツにします。そして金曜日や土曜日には必ずサービス残業をさせ、夜遅くまで仕事をさせます。ちなみに、この会社では夜6時になると暖房と冷房は消されます。
私はこのとき、この世には人を不幸にして喜んでいる人が本当にいるのだということを知りました。そして私にとって彼女は、この世で最もああはなりたくないと思わせる女性でした。
そんな彼女からも、私は学んだことがあります。
いくらおしゃれでも、人間性が最低だったら全く意味がないと。他人の人権を無視し、人を困らせて喜び、自分の利益を最優先する、そんな人がおしゃれをしたところで、それは肥大したエゴの醜い姿であると。
ファッションが好きな人はファッション至上主義に陥りがちですが、それは大変愚かなことです。おしゃれであることがこの世で一番重要なことでもないし、その人の魅力のすべてではありません。おしゃれでなくても魅力的な人はたくさんいるし、おしゃれでも最低な人はいます。
忘れないでください。いくらおしゃれであっても、中身がなく、他人の人権を平気で侵害するようなら、そんなおしゃれは全く意味がありません。どんなにおしゃれをしたところで、その人間性は隠せません。
中身が伴ってこそのおしゃれです。外見が重要でないとは言いませんが、それが絶対的なものではないということを知っておきましょう。そしてもし人生のどこかで、中身がなくて、ただ単におしゃれなだけの人に出会ったら、貧しい人だと哀れみましょう。そんな人に憧れることもうらやむ必要もありません。
おしゃれより人間的な魅力のほうが重要です。くれぐれも、おしゃれなだけでなんの魅力もない人にならないように気をつけましょう。


※こちら、私の下書きバージョンです。出版されたものとは若干違っております。

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