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2014年8月4日月曜日

リゾートのシーンでの衣装

ある程度の長いお休みがとれたなら、
どこかリゾートへ旅行する方も多いだろうと思います。
リゾートであるからには、普段の日常の見慣れた風景とは違う場所に立つことになります。
つまり、シーンがいつもとは違うのです。
シナリオ風に書けば、こんなふうになります。

○夏の海辺のリゾート地・海に面したバルコニーのあるホテルのロビー・午後
   白い壁のロビー。
   南国らしい色鮮やかな花が飾ってある。
   夏らしいドレスで着飾った女性やジャケットを着た男性が談笑している。
   華やかな雰囲気。
   あけ放たれたドアから、ボストンバッグを持った主人公が入ってくる。

さて、このシーンをイメージできるでしょうか。
これは、たとえば海辺のリゾートですが、高原の場合も、湖のほとりの場合もあります。
そして訪れるのは少し高級なホテルの場合もあれば、山小屋や民宿の場合もあります。
とにかく背景が違います。
背景が変わってくると、似合う衣装も変わります。
リゾートでの衣装を考えるときに必要なのは、その背景に似合う衣装を選ぶということです。

まず、海か山かで違います。
ホテルならヒールのサンダルが似合いますが、
気軽な民宿ならビーチサンダルが似合います。
山小屋だったら、登山用のウエアですし、
高原のホテルだったら、日差しを避けるためのつば広の麦わら帽子が似合います。

考慮するのは、風景だけではありません。
ほかの登場人物とのバランスも大切です。
高級なホテルに、Tシャツ、ショートパンツ、ビーチサンダルでチェックインしたら、
それはやはり似合いません。
夏の緑の美しい高原のホテルに、黒ずくめで入っていくのも似合いません。
まわりの人たちが、きれいな格好で来るようなところでしたら、
やはりそれに合わせる必要がありますし、
もっとくだけた民宿のような、夏の普段着の延長でも大丈夫なところでしたら、
それに合わせたほうがやはりよいです。

合わせるのはまず色合い。
そしてスタイルです。

色もスタイルも、自分の顔やスタイルに合うかどうかだけで決めるのではありません。
もっと引いて見るのです。
1枚の写真のように、
ドラマの1シーンのように、
鏡の中だけではなく、もっと大きな絵の中で、
想像力を働かせて、これから行くシーンの中で、
主人公が何色の、どんなスタイルだったら引き立つのか、
それを考えます。

夕食はどこでとるのか。
ホテル内のレストランだったら、和食なのか、洋食なのか、
どんなインテリアで、どんな照明なのか、
ほかにはどんな人が食事をしているのか、
キャンプ場に行ったなら、どんなスタイルで、どんな食事をするのかと、
すべて想像してみます。
そして、その中で似合う色とスタイルは何なのか、
自分なりに考えてみます。

ここで気にするべきなのは他人の目ではありません。
1枚の写真を撮るときのフォトグラファーの視点、
またはドラマの1シーンを撮るときの映画監督の視点を持った、
自分の目です。

服を買うときは、それは近視眼的に選んだほうがいい。
けれども、いつもとは違う背景に身を置くときは、
もっと引いた視点を持つといいのです。
そうなると、重要なのは、それがどこのブランド品か、
そのパールは本物か偽者か、ということではありません。
あくまでも、その大きな絵の中にふさわしいかどうかということのほうが重要です。
誰も近くに寄ってきて、あなたの服やジュエリーをしげしげと品定めする人はいません。
リゾートで出会うのは、毎日顔を見る相手ではありませんから、
あなたの普段着など知りません。
判断の基準は、その場に合っているかいないかだけです。

ホテルのロビーのゆったりしたソファに座っている自分の姿の写真を撮ってみてください。
そのホテルの雰囲気にその色は、そのスタイルは合っていたでしょうか。
キャンプ場のバンガローの前で写真を撮ってみてください。
選んだその帽子と靴下は、その風景にお似合いだったでしょうか。

舞台はリゾート地。
それは日常から離れた場所。
普段あらわれない自分と出会うのも、そんな場所でしょう。
普段とは違う色とスタイルで、普段はしないような振る舞いで、
自分の知らなかった自分に出会う。
自分が主役のドラマにふさわしい、
リゾートのシーンの衣装とは、主人公の違う一面を見せるためのもの。
いつもと同じだったら、ドラマにはなりません。
旅行に行った前と後では日常が変わるような、
新しい自分に出会えるような、
後から、あの素晴らしい出来事が起こった日にはこんなドレスを着ていたと思いだせるような、
そんな印象的な人生の1シーンにふさわしい衣装を選びましょう。

主人公である私たちは、それを決める権利を持っています。
その権利を行使するのみです。
美しいドレスを着た、その思い出のシーンのイメージは、
生涯を通して、私たちを励まします。
それだけが奪えないもの。
それだけが永遠に輝きを失わない、
死んでからもなお持っていける、私たちの本当の財産です。


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