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2014年4月21日月曜日

紺色(ダーク・ブルー)

日本語で言えば紺色、
英語だったら、ネイビー・ブルーやインディゴ・ブルーなど、
ダーク・ブルーの服は、誰でもが一度は着たことがあるのではないかと思います。
紺色はまず制服に使われることが多いですし、
ジーンズの色であり、
ピーコートやトレンチコートに多く使われる色だからです。
そして、男性のスーツばかりでなく、女性のスーツにも紺色は多く使用されます。
また、すべてのアイテム、Tシャツ、スカート、パンツ、靴下まで、
紺色は必ず売っています。
どこででも手に入りやすいのも紺色のアイテムの特徴です。

色彩心理学を出すまでもなく、
紺色は冷静さ、知的さを人々に感じさせます。
そこからはまじめな感じや、仕事ができるイメージを想起させます。
紺色を身につけることにより相手に与えるイメージは、
どれもポジティブなものばかりなので、
そんな印象を誰かに与えたい人にとって好まれる色です。

また、紺色は、黒から茶色のグラデーションとも相性がいいと思います。

紺色と黒の組み合わせは、上品にも、モードっぽくもなり、
コーディネイト全体を完成させやすい色合いです。

紺色の利点はまだあります。
紺色は、黒ほどに素材のよしあしを浮かび上がらせません。
たぶん、光の反射の具合が黒とは違うのが原因だと思いますが、
粗悪な素材の黒は、すぐそれだとわかるのに対して、
紺色の場合、あらが黒ほどわかりません。
手で実際にさわってでもみない限り、
学生の制服に使われる紺色のウール・ギャバジンと、
ハイブランドのウール・ギャバジンの違いはわかりません。

このように、多くの利点を持っている紺色という素材ですが、
唯一の欠点と言えば、多くの人が持っているので、
平凡に陥りやすく、
その人らしさを出しにくいという点でしょうか。
あまりに普通すぎるということにもなります。

このあまりにも凡庸な、
ありふれた、
しかし魅力的な紺色を、
その人らしく着るにはどうしたらいいか。
いくつかポイントがあります。

まずは、差し色で自分らしさを出してみること。
紺色に赤を差し色にしたら、そこに白を足すだけでトリコロールになります。
これは完璧ではあるけれども、ありふれた色合わせです。
この赤を、たとえば黄色にしてみるだけで、
紺色はより引き立ち、印象はがらりと変わります。
もちろん黄色ではなくても、紫でも、ショッキング・ピンクでも、
多くの色が紺色と合わせられます。
自分の好きな色を持ってくることで、凡庸から抜け出すことは可能です。

つぎに形の問題。
紺色のピーコートやトレンチコートは定番です。
ですから、どうしてもありふれてしまいます。
しかし、案外、紺色のブラウスやシャツは定番ではありません。
同じ紺色でも、アイテムによってはありふれていないものがあります。
紺色の学生用のバッグは多数ありますが、
大人用の紺色のバッグは極端に少なくなります。
靴にしても黒い靴ほど、紺色の靴はありません。
たとえば、紺色のブーツなど、ほとんど売っていません。
このように、同じ紺色でも、定番でない形、
アイテムにずらしていくことによって、人とは違った感じを出すことができます。

では最後に、紺色の定番を着て、それでもなおその人らしいスタイルについて書いておきましょう。
最近、ノームコアというファッション用語が新しく出現しました。
これは、肝入りのノーマルということで、
デザインも、色も、徹底的に普通のものを選ぶスタイルです。
この言葉を紹介していたBritish Vogueの記事には、
ジーンズとTシャツというような普通のスタイルのモデルたちの写真が多く掲載されていました。
この「ノームコア」を志向する人たちが多く選ぶ色の1つは明らかに紺色でしょう。
しかし、彼女たちは決して凡庸ではありません。
たとえばモデルであるとしたら、彼女たちは非凡な体型を持っています。
そのスタイルは紺色の定番アイテムを身につけることによって、
より一層引き立ちます。

また同じように、白いシャツにジーンズというようなスタイルを好むデザイナーたちはどうでしょうか。
彼らの体型は非凡ではありません。
しかし、彼らは非凡な才能の持ち主です。
彼らがアピールしたいのは、着ている服ではなく、その才能です。
彼らが誰かと会って話すとしたら、必要以上に服に注目がいっては、
その才能が見えません。
彼らは自分の才能を目立たせるために、あえてインディゴ・ブルーのジーンズを選ぶのです。

もしあなたが何かの分野で、
それは体型かもしれませんし、話術かもしれませんし、美しい顔かもしれませんが、
非凡であるならば、
あえて紺色の定番だけでコーディネイトしてみるのもいいかもしれません。
必要以上に服に出しゃばってほしくなかったら、
服が余計な情報を伝えてほしくなかったら、
それ以外の部分をぜひとも理解してもらいたいのなら、
凡庸な紺色のコーディネイトは、それらを引き立てるでしょう。
服のことなど見ないでほしいとき、
忘れてほしいとき、
紺色は強い味方です。

紺色の服は、世界の意味のコードの中で、強固な意味を持っています。
それが壊れることはありません。
時にはそれを利用し、
時にはそれに助けてもらい、
時にはそこから抜け出して、
自分なりの紺色との付き合い方を見つけましょう。
ダーク・ブルーは暗闇などではなく、
明晰な知性です。
賢く見せるためではなく、
賢いからこそ、使いましょう。
ブルーになるためではなく、クリアになるために使いましょう。
それは誰でも、いつでも、どこでも手に入れることができる、
多くの人に平等な色です。