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2014年1月27日月曜日

Tシルエット

2012年以降のシルエットの変化に伴って、
服そのものの構造が変化してきています。
最初にその片鱗が見られたのが、貫頭衣、つまり、四角い布に頭を通す部分だけあけたような、
原始的なスタイルでした。
貫頭衣は、衣服の原初的な形ですから、その後に待っているのは、
進化の過程です。

ここへきて、コート、ジャケットなどを含むトップスに、
Tシルエットという、Tの字のような肩線のシルエットのアイテムが多くなってきました。
平らなところへ置いてみるとわかりますが、
肩線は直線、またはなだらかな傾斜で、
肩幅は実際の身体の肩よりかなり広く(たぶん10センチぐらい)、
袖は腕の途中から始まります。
当然、体にはタイトにフィットしません。
その大き目の肩幅のものを、
ふわりと羽織るスタイルが多く出てきました。
特に春夏物においては、大き目のTシャツやドレスなど、
かなりこのスタイルが見られます。

新しく提案されたものは、いつでも最初、粗野な形のままあらわれます。
新しくはあるけれど、まだまだ洗練されてはいません。
その新しさがある程度、浸透していったそのあとは、
洗練への道が始まります。
今はその洗練が始まったばかりの時期に該当します。

思い起こせば、いつでもこのことは繰り返されてきました。
80年代の黒く四角いビッグシルエットのときも、
2000年頃に、いきなりタイトなシルエットがあらわれたときも。
最初のデザイン、そしてスタイルは、大胆ではあるけれども、どれも荒削りです。
そして、それは時間をかけて成熟していきます。
成熟したその後は、だんだん飽きてきて、
無理をしながらの維持と、惰性と、まやかしが横行します。
もうそうなったら、流行は終わりです。

その渦中にいると、このことはわかりません。
そして、受け身なだけの視点でも、そのことには気づきません。
なぜ今これが流行っているのか、
そしてその流れはどこへいくのか把握しなくては、
そのとき起きていることの本当の意味を知ることはできません。
ですから、選択するときには、一つ上の視点が必要です。

Tシルエットは、洗練への道の途上で出てきたシルエットです。
これはまだ、進化の過程です。
今、多くのデザイナーたちは、どうすればより洗練されるのか、
シックになるのか探っている最中です。
最終的な答えが出るのは、もう少し先のことでしょう。
Tシルエットは、この移行期のシルエットとして、楽しむことができます。
逆に言えば、シルエットとしての完成型ではないので、
定番や、永遠性とは遠いということです。

この流れの中で、どんな完成型のシルエットが出てくるのかは、
まだ誰にもわかりません。
案外、そんなものなど、ないのかもしれません。

ファッションは、時代と過去からの伝統だけでできているわけではなく、
人間の肉体抜きでは作れません。
どんなにシルエットを変えようとしても、
人間の体からは逃れられません。

Tシルエットの行き先をながめつつ、
自分に必要なものを選びましょう。
それは永遠に続くものではありません。
今だけの楽しい遊びかもしれません。
与えられた流行の波に流されるのではなく、
こちらから、その波に乗るか、乗らないかは自分で決められます。
視点を上に持てば、それは、できるはずです。