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2013年3月18日月曜日

麻素材の服について

ここ数年、ナチュラル志向のファッションの流行に伴い、麻素材の服がたくさん市場に出回るようになりました。
実は、麻素材と呼ばれているものは数種類の植物から作られる繊維の総称で、大きく分けると、リネンと呼ばれるアマ科の植物、ラミーと呼ばれるイラクサ科の植物、ヘンプと呼ばれるアサ科の植物です。
これらは、科が違うことからもわかるように、はえている姿はみな違います。ただ、結果的に、光沢と通気性がよい繊維ができるため、麻と総称されているようです。

最も高級で、衣服に用いられているのはリネンと呼ばれる麻素材です。英語ではlinen、フランス語では、linと表記されています。

この麻ですが、衣服として使われていた歴史は古いのにもかかわらず、いろいろな意味づけがなされたため、少しやっかいな位置づけになっていると思います。
というのは、日本では、麻素材の服は夏だけのもの、と思われているからです。

これは多分、着もの文化の影響だと思われます。たしかに、麻素材の着ものは夏専用です。
また、たとえば黒澤明の映画や、小津安二郎の映画を見ると、1950年代、60年代の男性の夏服が、白い麻のスーツであったということもわかります。
それは麻の最大の特徴である、通気性がよく、汗をよく吸い込むこと、さらっとした触感、そして何より洗濯しても、乾きが早いことなどをもって、麻は夏のもの、とされたのだと思われます。

ただ、日本においても、江戸時代に木綿が入ってくるまでは、麻素材(この場合は麻科の麻でしょうが)が一般の人々の衣服の原材料でした。
ですから、どこで麻が夏だけのものと定義づけられたのかは、定かではありません。
どこからか変わってしまって、それが現在までずっと定着してしまっています。
けれども、麻素材は、決して夏だけに適した素材ではありません。

洗濯しても乾きが早い、洗濯に強く、傷んだり破けたりしにくい、そして洗うたびに、繊維がしっとりやわらかになり、肌触りがよくなる、繊維の中に含まれる空気が多く、冬でも暖かいなど、実際は、1年じゅうを通して着用可能な素材なのです。

最近、ジャケット、コート、シャツ、ブラウス、パンツ、スカートなど、ほぼすべてのアイテムが麻素材から作られるようになりました。
また、コットンや化学繊維と混紡することにより、麻特有のしわになりにくさも、少しですが、解消されてきました。
ただ、やはり「麻は夏だけのもの」という固定概念が、足かせになって、なかなか日本では、冬に麻を着ることに抵抗があるようです。

季節感は、おしゃれをする上で、確かに大事です。
けれども、最近の日本の夏の異常な長さひとつをとっても、昔ほど、厳密に、たとえば4月になったら冬の服は全部しまって春の服、9月になったら秋の服などという衣替えは、行われなくなりました。
それに伴って、麻を着ていてもおかしいと思われない期間も、長くなったのではないかと思います。

その上で、日本人が大事にする季節感を大切にしつつ、1年じゅう着用しても問題がなく、かつすぐれた面がたくさんある麻を着るにはどうしたらいいか、考えてみました。

まず、たとえば麻素材100パーセントのコートやジャケットは、春から夏までの着用とする。
結局は、外側の見た目の問題なので、何となく涼しげに見える麻素材をアウターとして着るのを避けるというのは、1つの方法だと思います。

シャツやブラウス、Tシャツなど、インナーは1年じゅう着用しても問題なし。
たとえばセーターやカーディガンの下のシャツが麻素材であったとしても、それだけで夏っぽくはなりません。着やすい、かつあたたかいシャツやTシャツは、インナーとして1年じゅう活用しましょう。

リネンとウールの混紡素材などは、秋冬用として着用する。
ウールが入ることにより、麻独特のさらさらした感じがなくなります。そうであるならば、秋冬に着ても、問題ありません。

麻素材のシャツやブラウスを着たことがある方ならわかると思うのですが、何度も洗濯した後の、あの独特のやわらかさは、ほかの素材にはありません。
そして、朝洗って、昼間には乾いてしまうほどの乾きの早さは、なかなか乾かない木綿に比べたら、とても大きなメリットです。
一時期、しわになるからと、麻素材が嫌われて、シャツもほとんど売っていなかったときもありましたが、トータルで考えれば、麻素材のものは着用する上でのメリットが大きいのです。

ルールは確かにあります。
ただ、理不尽な、意味のないルールも存在しています。
それは、それぞれの意思によって、かろやかに破っていけばよいのではないでしょうか。
そして、それを破るときは、わかっていながら、それをやればいいわけです。
あえて、それを選ぶという、自分の意思表示として。

冬に麻を着るときは、本当は夏のものだけどなどと、言い訳などしないで、
堂々と着てしまいましょう。
知っていて破るならば、それもおしゃれの1つの表現です。



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