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2013年3月11日月曜日

ジャパニーズ・スタイル


2013年春夏シーズンで、数多くのデザイナーがジャパニーズ・スタイル、といってもほとんど着もののモチーフなのですが、をデザインに取り入れています。
プラダ、ランバンは着ものの構造を、そして、グッチやハイダー・アッカーマンは、着ものの柄を使ったデザインの服を発表しています。

こういった、ジャパニーズ・スタイルを取り入れたデザインは、何年かに1度必ずやってくるので、何も珍しいものではありません。
特に今シーズン、各デザイナーが着ものの形を取り入れたのは、大きくシルエットが変わっていく中で、着もののなで肩のラインが、目指したいシルエットと合致したからだと思います。
そして、それに付随していく形で、着もの柄にも注目されました。

ただ、このジャパニーズ・スタイルですが、わたしの記憶する限りにおいて、日本で流行ったことがありません。
(思い出せるのは、中森明菜さんの「デザイアー」のときの着ものにハイヒールだけ。古すぎてわからない?)
海外の多くの有名デザイナーが、どんなに着もの風のデザインを発表しても、それをたくさんの日本人が喜んで着ていたという時代はなかったと思います。

なぜかはわかりません。
しかし、明らかに、ここ数年、特に加速する形で、わたしたち日本人は欧米風のスタイルを必死で追いかけています。
行きついたところが、髪を金髪に染め、目にはブルーのカラーコンタクトを入れる、そんなスタイルでしょう。
日本人らしさから必死で遠ざかる、そんなスタイルがここ数年、ずっと流行っています。
なんの疑問も持たずに。
そして、夏の浴衣以外では、ごくごく普通の人が着ものを着ることも、めっきり少なくなりました。
(もちろんこれは、着ものの値段が高すぎて、一般の人の手に届かなくなったということも原因だとは思いますが)

だけれども、たとえば、「THE SARTORIALIST 」などの、ストリートファッションブログで取り上げられる日本人のスタイルは、ブルーのウィッグにゴシック・ロリータ姿の原宿ガール以外では、若い子たちの浴衣姿であったり、江戸っ子の粋なおじさんたちの着もの姿です。
海外のファッションの目利きが、わたしたち日本人に求める、日本人らしいオリジナルスタイルは、アニメ風か、そうでなければ、日本の伝統的な着もの姿なのです。
そして、そんな姿がおしゃれである、ファッショナブルであると思うからこそ、彼らはそのスタイルの写真をブログにアップします。

しかし、日本人であるわたしたちは、まだそのことに気付いていません。
欧米人に近づくことこそが、おしゃれであると思いこんでいます。
(もちろんこれは、思い込まされているということもあります。自分で選んだのではなく)

たとえば、必死に欧米人にただ近づいただけのスタイルで、パリ、ロンドン、ミラノ、ニューヨークへ行ったところで、まわりの人からは、アイデンティティのない、得体のしれない人にしか見えないでしょう。
そして、それは結局、おしゃれではないのです。
自分のアイデンティティを捨てることは、決しておしゃれではないし、尊敬されないのです。

それに気付いていたのが、山口小夜子さんであり、節子・クロソフスカ・ド・ローラさんでした。
彼女たちは、欧米のスタイルに100パーセント迎合することなく、自分たちのスタイルを貫きました。

さて、ここら辺で、わたしたちも、もう一度、日本人としてジャパニーズ・スタイルを自分たちのファッションにどうやって取り入れるか、考えてみたらいかがでしょうか。
日本人なのですから、日本風が似合わないはずはありません。
マルタン・マルジェラの足袋ブーツだって、欧米の方たちがはくよりも、うまくはけるはずです。

日本でも、大々的にではありませんが、着ものを現代にアレンジしたスタイルを発表しているブランドもあります。
(わたしが注目しているのは、京都のSOU・SOUです)
そして、それらを利用して、世界じゅうの誰よりも格好良く、ジャパニーズ・スタイルの服を着こなしてみたらどうでしょう。
今の自分の持っているアイテムに、どうやったらジャパニーズ・スタイルの要素を取り入れることができるか、工夫してみるのです。
それが完成したら、その格好で、海外の都市を背筋を伸ばして歩いてみましょう。まわりの人たちが注目することは請け合いです。
それは、日本人が欧米人の真似をしたスタイルでいることより、ずっと格好いいに決まっています。
そのことに、わたしたちはそろそろ本格的に気付かないといけません。

誰かになろうとしてもなれません。
なれないものになろうとあがいても、格好悪いです。
だからこそ、自分であることに自信を持って、
自分が生まれ育った土地の文化を誇りに、
新しいスタイルにチャレンジしましょう。
わたしたちにとっての新しいスタイルこそが、ジャパニーズ・スタイルであり、
それはわたしたちが最も得意とする分野なのです。