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2013年2月11日月曜日

服をたくさん持っていても

今まで私のファッション・レッスンをたくさんの方が受けてくださいました。
そして、皆さんのワードローブを拝見してきました。
その中で、ほとんどの人の悩みは同じであるとわかりました。
その悩みとは、服はたくさんある、けれども着るものがない、ということです。

ほとんどの人が、たくさん集めた服を前にして、
どうしていいかわからない状態でいます。
捨てるほどはいたんでいない。
もちろん、それほど古くない。
着た回数も少ない。
そんな服がたくさんあります。
しかし、たくさんあるにもかかわらず、着るものがないと感じる。
これは本当の意味で、着るものがないというわけではありません。
正確に言えば、コーディネイトできないということです。

ワードローブは野球のチームに似ています。
アイテムにそれぞれ決まった役割があって、それにふさわしいメンバーを集める必要があります。
ふさわしいメンバーがそろって初めて試合ができるのです。

けれども、皆さんのワードローブを見ていると、
同じような種類のピッチャーをたくさんそろえていたり、
そうかと思うと、キャッチャーがいなかったりと、
チームとして機能できない状態です。
そして、実際には試合に出ない、二軍、三軍の選手ばかりがたまっていきます。

野球のチームと同じように、二軍、三軍の選手も面倒を見なければなりません。
少なくとも、ワードローブの片隅に場所を用意してあげる必要があります。
人間と違ってお給料を出す必要はありませんが、
それでもメンテナンスにはお金がかかります。

二軍、三軍の選手はしょせん、試合には出れません。
持っているだけです。
そして、その持っているだけの二軍、三軍がどんどんふえていきます。
私たちは洋服と契約しているわけではないので、
いらないという決定は自分でくださなければなりません。
洋服と交渉する必要などないのです。
それなのに、なかなか捨てられません。

ここから抜け出すには、まずワードローブをチームとして考えること。
好きだからといって、ピッチャーばかり集めないこと、
どうでもいいからといって、キャッチャーを無視しないこと、
そしてすべての選手が力を発揮できるよう、
相性のいい仲間、つまり、コーディネイトできる仲間をそろえることです。

そのために、アイテムの数、色などを最初から決めて、
そして服を集めます。
野球の選手のスカウトマンも、一目ぼれで選手を選びません。
服も同じです。
一目ぼればかりで選んだ選手は、当たり外れが大きいからです。
(もちろん、すべての一目ぼれを否定はしませんが)

ここまでやるだけでも、ワードローブはかなりすっきりしますし、
無計画に買い物をすることもなくなります。
内野手を探していたのに、外野手を連れて帰ったなどということもなくなります。

けれども、本当はこれだけでは解決しません。
なぜなら、それだけでは持っている二軍、三軍の選手を手放せないからです。

他人の目から見ると、それは明らかにいらないものなのです。
ものとしては、そう見えます。
しかし、持ち主の目からは、そうは見えないようです。
捨てられないものは、単にものではなく、そこに思いや感情がはりついているからです。
そして、本当に捨てられないのは、その思いと感情なのです。

明らかにいらない服がある。
けれども、捨てられない。
もしそうだとしたら、自分自身に問うてみてください。
捨てたくない理由は何なのか。
持っていることのメリットは何なのか。
捨てようとすると込み上げてくる、その痛い思いはどこからやってくるのか。
それを持っていると安心なのか。
それを捨てないという自分は、本当のところ、どうしたいのか。

そして、もしその答えが見つかったとしたら、
その思いを手放しましょう。
胸のあたりにぞわぞわと上がってくる、その気持ちを認めて、
それから、ありがとうとお礼を言い、
さよならしましょう。
もしかして、その服を持っていることで、自分は安心できたのかも、
もしかして、その服を着ていてほめられた思い出が忘れられなかったのかも、
もしかして、両親が買ってくれたものだから、罪悪感で捨てられなかったのかも、
もしかして、初めてもらったお給料で買った服なので、思い入れがあるのかも。

本当に捨てられないのは、服という布ではないのです。
本当に捨てられないのは、その服を見ると胸の中に浮き上がってくる、
ざわざわとした気持ちです。
その気持ちを手放さない限り、捨てられません。

手放せない気持ちはやがて執着となり、
人生を停滞させる原因となります。
それがよい思い出だとしても、同じです。

手放しましょう。
それは自分しかできません。
ほかの人がいくら言っても、その思いを手放せるのは自分だけです。

手放すことに成功したら、
人生が動き始めます。
もうこの先は通行止めだと思っていた道を通り抜けられます。
しまっていると思い込んでいた扉が開きます。

捨てられない服とは、あなたの人生に立ちはだかっていた、
あなたが自分で作った、壁だったのです。
壁は壊せます。

自分で自分にかけた魔法です。
そうであれば、とくことだって、自分でできるのです。
やってみてください。
それは驚くほど簡単なことです。