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2012年9月10日月曜日

ボーイフレンド・スタイル

服全体のシルエットが大きくなってくると、
ボーイフレンド・スタイルが復活してきます。
ボーイフレンド・パンツ、
ボーイフレンド・シャツ、
ボーイフレンド・ジャケット、
ボーイフレンド・セーターなどなど、
あたかもボーイフレンドから借りたような、
自分のサイズよりは大き目の服のことを、こう呼びます。
では、なぜ単なるビッグパンツでも、ビッグシャツでもなく、
「ボーイフレンド」なのでしょうか。

勘違いしないでほしいのは、
ボーイフレンド・スタイルは、女らしさを感じさせないようにする、
あたかも少年っぽく見せるスタイルではないということです。
ボーイフレンド・スタイルだから女っぽく見えない、
ボーイフレンド・スタイルだから男の子っぽい、
そうではないのです。
その逆に、ボーイフレンド・スタイルは、女らしさを際立たせるために用いる、
ファッション独特の手法です。

おしゃれに見えるスタイルは、常にバランスがとれています。
色のバランス、
分量のバランス、
古さと新しさといった、具体的に目に見えるバランス。
それと同時に、フェミニン、マスキュリンといった、何となく、そんな雰囲気というような感性のバランスも、常に崩れないようにします。
そんなとき、行き過ぎた女らしさや、男のようなスタイルは、好まれません。
女らしさだけを強調するスタイル、
たとえば胸を必要以上に強調したり、
くっきりボディラインを見せたり、
スカートを短くするようにといったスタイルは、
女性の体の強調であり、見せつけではあっても、
それを「おしゃれ」とは呼びません。
それらが意図するものは、ただ1つのことであり、
おしゃれとは違うものだからです。
そして、即物的な、そのやり方を、おしゃれな人々は嫌います。
なぜなら、そこには想像する余地がないからです。
ミステリアスではない、そんな、これ見よがしの、もの欲しげなスタイルでは、
相手を魅了することはできません。


ボーイフレンド・スタイルとは、女性らしさを表現するための、
わざと反対のベクトルを使うおしゃれのテクニックの1つです。
ボーイフレンドのようになるのではなく、
ボーイフレンドのアイテムを使って、女性らしさを作ります。

ここまで書いたら、具体的な取り入れ方はもうおわかりでしょう。
ボーイフレンド・スタイルを取り入れるときは、
決して、ボーイフレンドのように、少年のように、男のように、ならないこと。
大きめなシルエットの中で、きゃしゃな体が泳いでいる、
その姿がかわいらしく他人の目には映ります。
ボディラインがわからないから、ボディラインを想像させることができます。
男っぽいものを着ているからこそ、女らしさを感じさせます。
女らしさと、着ているものの男っぽさ、そのギャップこそ、
おしゃれに見えるポイントです。
だから、すべてを男仕立てにして、
振る舞いや言動まで、男のようだったら、
ボーイフレンド・スタイルは台無しです。
ボーイフレンドアイテムを1点取り入れる。
そして、必ずどこかに女性しか身につけないようなものを入れる。
たとえば、ピンヒールだったり、
パールのピアスだったり、
真っ赤な口紅だったり、
わざとボーイフレンドとは一番遠いものを持ってきます。
そして全体のバランスをとり、女性らしさを演出します。

おしゃれとは、一種の頭脳ゲームです。
他人にどう見られるか、ではなく、
他人にどう見せるか。

主導権はいつも自分が握ってなければいけません。
よくしつけられた犬のように、
あなたは服に着られるのではなく、
服を手なずけなければなりません。

そのために必要なのは訓練だけ。
毎日の訓練の繰り返しをすれば、
思い通りに行動する犬のように、
洋服は、あなたの忠実なしもべになるでしょう。
リードするのは、いつでもあなた自身です。

☆写真:ボーイフレンド・スタイルとはちょっと違うけど、ユニセックスな着こなしのジェーン・バーキン。
ポイントはかごバッグ。