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2012年1月23日月曜日

アニマル



去年のプラダのコレクションだったでしょうか。パイソン、つまり蛇プリントのドレスというのがありました。そこら辺から、少しずつアニマルプリントが復活してきています。
このアニマルプリント、完全になくなるということはありませんが、何年かおきに、必ず復活して、種類や幅を広げています。今までトラ、ゼブラ、ダルメシアン、牛なんてあったと思いますが、パイソン柄のドレスはなかったのではないかなと思います。

ここで、ちょっと話はずれるのですが、どうして今年の流行はこれ、となったら、ショップに一斉にその色や柄のものが売り出されるか、その仕組みを簡単にお伝えしましょう。
メーカーやブランドが洋服を作る場合、もちろんまず生地が必要です。
しかしこの生地ですが、すべてオリジナルというメーカーやブランドは少数派です。
すべて100パーセントオリジナルとなると、ほとんどないのではないでしょうか。
そうなると、メーカーもまず生地屋さんから生地を買うわけです。
生地屋さんの営業さんが、デザイナーやMDに生地を売り込みに来て、この柄をこの色でとか、この生地をこの色で何反とか発注します。
では、生地屋さんはどうやってその生地の色やデザインを決めているのでしょうか。
もちろん生地屋にもデザイナーはいますから、そのデザイナーが考えるわけですが、そういった人たちが大いに参考にしているのが、各種プラン会社から出されるトレンドブックなのです。
何社かありますが、有名なのは、たとえばフランスのプルミエール・ヴィジョン。そういった会社が、ずっと先の年のトレンドカラー、イメージ、柄など、細かく提案されたブックを販売しています。そして、それを参考にして生地が作られていきます。
つまり、生地屋さんのネタ本があって、それをもとに生地を作る、メーカーが買う、それで洋服を作るという流れになります。
そうすると何が起こるか。オリジナルで生地を作るブランドを除いては、皆、生地屋さんで布を仕入れるわけですから、あちらのブランドも、こちらのブランドも似た色、似た柄、似た織りになっていきます。
これが、ある年、どのショップに行っても同じような色、柄のものが並ぶ理由なのです。
こうやって流行は、あるところから仕掛けられるわけですが、最近、みんながそれに安易に乗るという感じではなくなってきました。いくらトレンド発信会社があおっても、乗らないものは乗らない、乗らなくてもほかにいくらでも選択肢のあるというのが今の時代です。

さて、たぶん、そんなトレンド発信会社が何年かに1度、アニマルプリントをトレンドとして発信するのでしょう。去年ぐらいから、また多く見られるようになりました。

では、このアニマルプリント、どうやって取り入れたらおしゃれに見えるでしょうか。
アニマルで有名なのは、大阪のおばさまたちでございますが、もちろんあの方向では、決して素敵には見えません。何がいけないのかというと、その分量なのです。
アニマルが全体の7割、9割で、それでも素敵に見えるというのは、とてもまれなこと。
だいたい普通の人がやると失敗します。
ここら辺、同じ柄でも、花柄とは大きく違います。
つまり、リバティプリントの花柄のワンピースは素敵で可憐に見えても、ひょう柄のワンピースは、そうはいかないということです。
それはなぜうまくいかないかというと、花とひょうでは、想起させるものが違うからです。
意味が違うのです。
単なる色とパターンの組み合わせではなく、意味を持っているのです。
トラ、ひょう、蛇、そんなアニマルたちを見て私たちが思い出すのは何でしょう?
そう、あの彼らの食事の風景。
本当の意味で肉食です。
だから、そういったプリントを身につけると、あなたはそれを見る人に、肉食メッセージを伝えてしまいます。
ファッションは、1つの情報です。
そんな肉食に見せないためには、使う分量をうんと少なくすることです。
例えば、全体の中でベルトだけ、バッグだけ、手袋だけ、スカーフだけ。シャツだったら、上着を着て見える分量を少なくする。
こんなふうに少なく使う分には、ちょっとそれだけで上級のおしゃれに見えます。
料理に入れるスパイスと同じで、ほんの少し、最後の仕上げに付け足す感じです。

いくらあなたが肉食系だとしても、それを全面に押し出すなんて、野暮なこと。
見せればいいってもんじゃ、ありません。
見せれば見せるだけ野暮になる、品がなくなる。
これはもちろん、アニマルプリントに限ったことではありません。
どんなものでも見せ過ぎは、欲望の対象にはなるでしょうが、憧れの対象にはならないのです。

☆写真はうちのアニマルでした~。(猫柄プリントってないね)