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2014年9月15日月曜日

流れを読むための定点観測のすすめ

私たちは日々、その日に食べるものを買います。
ほとんどの食べ物は買ってから、間もなく消費されます。
1年以上も、それを保持しているということはまれです。

日々ではありませんが、私たちは服を買います。
しかし、そのほとんどは、消費し終わるまでにある程度の月日を要します。
それは短いもので1シーズン、
長いものでは10年以上に及ぶものもあります。

食べ物も、衣服も、買うという同じ行為によって手に入れるわけですが、
これらを同じ視点で買うことは、適当ではありません。
かたや、1週間かそこらのためのも、
かたや、これから先、何年も続くであろうためのものです。

食べ物を買うときに、私たちは賞味期限をチェックします。
それは「いつまで食べることが適当か」ということの指標です。
けれども、残念なことに、衣服には賞味期限の記載がありません。
それが果たしていつまでもつのか、
買う時点では、ほとんどの人にはわかりません。
わからないことですが、失敗のない買い物をするためには、
これをある程度、把握することは必要です。
買ったはいいけれども、
賞味期限がすぐ訪れるものなど、
手に入れないほうがいいからです。
ファッションの流れを読み、
今まさに買おうとしているものが、
この先、どの程度、着られるものなのかと推測するためにも、
定点観測をおすすめします。

少なくとも、今、このブログを読む環境にある人は、
インターネットに接続可能であると思います。
(誰かがコピーしたものを違う媒体で読むのでなければ)
そうであるならば、同じように世界中のあらゆるファッションに関連する情報に、
アクセスすることも可能です。
ファッションのプロでもない限り、
すべての情報をチェックする必要はありません。
ですから、定点観測です。
たとえば、自分が好きなブランドのコレクションの情報を、
それは買わないかもしれないけれども、
チェックし続けるのです。
春夏、秋冬、クルーズ、プレシーズンと、
少なくとも年4回、新しいコレクションの情報が、
インターネット上で公開されます。
それはブランドのHPにもありますし、
雑誌のコレクションをまとめたページにもあります。

それによってわかることがあります。
それがファッションの流れです。
流行という言葉で示されるように、
ファッションはある方向に向かって流れていきます。
そして優れたデザイナーは、
必ずその流れを把握しています。
彼らは、いつでもほんの少し先の未来予測を、
コレクションを通じて教えてくれます。
何年も続けて、定点観測し続ければ、
誰にでもこの流れの方向がわかるようになります。

ファッションの流れがわかると、
おのずと、売られている服の賞味期限についてわかってくるようになります。
シルエットの流行の変化が見えるようになり、
終わるものと始まるもの、続くものの区別がつきます。
そのとき私たちは、
1枚のジャケットに、
その色や素材や値段など、見えるもの以上のものを見るようになるのです。
つまり、その服が持っているデザインの立ち位置です。
その位置が遅れたものなのか、
今のものなのか、
一歩進んだものなのか、
それが見えてきます。
それがわかれば、その服がいつまでもつものなのか、大体の予想がつき、
それを考慮して買い物することができます。
1シーズンで消費し切るものは賞味期限の短いものを買ってもよいし、
10年着たいというものは、賞味期限ができるだけ長いものを選ぶことが可能になります。
賞味期限が短いものとは、今だけの気分のものであり、
賞味期限が長いものとは、これから続く流れを見越したシルエットのものです。
たとえば、2000年だったら、タイトなシルエットのコートがその後、10年続く流れでしたが、
2014年になって、完全に流れが変わってしまった後は、
コートの流れはビッグシルエットへ向かっています。
つまり、ビッグシルエットのほうが、賞味期限の長いコートになります。

また、この定点観測で流れがわかれば、
次のシーズンにくるであろう、新しいスタイリングの形がわかります。
「新しさ」とは、何も新しい「モノ」だけのことではありません。
バランス、組み合わせ、着こなし方法など、
今まで既に存在していたものの新しい組み合わせ方や、
新しいバランスのとり方などのスタイリングもまた「新しさ」です。
流れがわかるようになると、
次に新しく見えるスタイリングの形は何なのかがわかるようになります。
それがわかれば、
今持っているアイテムの組み合わせを変えるだけで、
あるいは何か1つを付け足すだけで、
新しく見えるスタイリングがわかるようになります。
その新しいスタイリングの気分を、
いちはやく取り入れることも、おしゃれに見せるための重要な要素です。
それは多くの人が取り入れる前に取り入れたほうがよりよいのです。
見飽きるほどに街にあふれるころに取り入れたのでは遅すぎです。
たとえばタイトスカートには今、ハイヒールをあわせるべきなのか、
スニーカーをあわせるべきなのかは流れを見ればわかります。
流れが向かう組み合わせを選べば、
そのスカートが、たとえ5年前のものであっても、
新しく、おしゃれに見えます。

これら定点観測には、ニ、三のブランドを見るだけで十分です。
たくさん見る必要はありません。
それでも定期的にチェックするだけで、
確実にわかるようになります。

20年前のように、
コレクション情報が一部の人のものである時代は終わりました。
私たちがインターネット上でアクセスできる情報は、
環境さえ整えば、特別なものではなくなり、
誰でも平等に見られるものになりました。
そこにはプロと素人の差はありません。
私たちが今、接することができる情報は、
限りなくオリジナルに近いものなのです。
私たちが学べるのは、オリジナルからだけです。
二次情報ではなく、オリジナルに接することで、
多くを学ぶことができます。

流れを読む、
その上で買い物をする、
スタイリングを考える。
私たち一人一人、
それができるようになれば、
誰かにおだてられて余計なものを買うことも、
流行っているらしいからと、街にあふれるものを買うこともなくなります。
自分が自分専属スタイリストになるためにも、
流れを読みましょう。
特別な才能はいりません。
ほんの少しの労力と、
そうなりたいという気持ちだけで、
それは誰にでも可能です。

☆「ファッション・レッスン」等、各種セッションのお知らせはこちらです。
★ こちらのブログ及びメールにて個人的なファッションのご相談、ご質問は受け付けておりません。












2014年9月8日月曜日

接近するファッションとスポーツウエア

スポーツウエアのテイストをそのままファッションに持ちこんで衝撃を与えたのは、1990年代後半のプラダでしょう。
大きく、重厚だったファッションの流れを、
シンプルで軽く、そしてスポーツウエアのテイストを加えたのが、
その当時のものだったと思います。
それ以降、スポーツウエアにデザインのオリジナルを持つもの、
たとえばウィンドブレイカー、パーカー、ポロシャツなど、
ごくふつうにコレクションで取り上げられるようになりました。
しかしその当時のファッション界におけるスポーツウエアは、
形だけを取り入れただけで、
同じ形だけれども、機能性はゼロの、
スポーツウエアをただ真似たものの域は出ていませんでした。
しかし、ここへきて、その形だけを真似たものの領域から出ようとする動きが出てきています。

同時に、スポーツウエアのメーカーはファッションに歩み寄ってきています。
ステラ・マッカートニーやフセイン・チャラヤンに代表されるように、
それまでコレクションを発表していた、いわばふつうの服のデザイナーが、
スポーツウエアのメーカーとコラボレーションする形でスポーツウエアを発表しています。
それらはまさに、デザインと機能性、両方を兼ね備えたものであり、
ファッションの側も、スポーツウエアの側も、
両方を同時に満足させるものになっています。

ファッションがスポーツウエアに歩み寄るようになったのには、
いくつかの理由が考えられます。
ファッションの急激なカジュアル化、
それによる、より動きやすく、リラックス感のあるデザインへの志向、
ハイテク素材の開発によりデザインと同時に機能性が実現できるようになったことなど、
さまざまな要因が同時多発的に発生し、
それが一気に同じ方向へ流れ込んできた結果が今でしょう。
その流れは、もはやオートクチュールと言えども無視できなくなり、
今ではシャネルやディオールまでも、
ドレスの足元にスニーカーを提案しています。
しかもそれは、飾り立てられ、ほとんど歩けないようなしろものではなく、
ストリートを駆け抜けることができる、
正真正銘のスニーカーなのです。

スポーツウエア、そしてアウトドアウエアなどの機能的なウエアは、
今後もファッションの中で大きな位置を占めるでしょう。
それは、ファッションが「特別な誰か」の独占物であることから、
より多くの、ふつうに街を歩く人々へと広がった証拠でもあります。

「特別な誰か」のためだけに服を作ってきたデザイナーは次々と消えていなくなりました。
たとえばスタイルのいい体型の人だけのために作ったデザイナー、
お金のある人だけのために作ったデザイナー、
自分のクリエイティビティのためだけに作ったデザイナー、
ファッション業界の内輪だけのことを考えて服を作ったデザイナーなど、
今ではどこにいるかさえわかりません。
ふつうの人々がアクセスできない服は、結局、消えていくのです。

スニーカーやスウェットシャツ、
ウィンドブレーカーやダウンジャケットは、
誰でもアクセス可能です。
手が届かないものではありません。
「ジヴァンシーのバンビのスウェットシャツが欲しいのよ」とか言わなければ、
ふつうに手に入ります。
シャネルのスニーカーは買えなくても、
ニューバランスなら、近くのマーケットでも手に入ります。
同じように、
ステラ・マッカートニーのコレクションラインは買えなくても、
アディダス・バイ・ステラ・マッカートニーなら、買うことができます。

服は、誰かが着なければ、完成しないのです。
美術館に飾られたとしても、それはやはり完成ではないのです。
服は人が着て、歩いて初めて完成品です。
そのためにも、デザイナーはストリートのふつうの人々に近づく必要があります。
スポーツウエアに近づいたデザイナーたちの意図は、まさにそこにあるのです。
彼らは「特別な誰か」ではなく、
「ふつうの私たち」に近づこうとしているのです。
なぜなら、それこそが彼らが生き残ることができる、
唯一の道だからです。

私たちは、近付いてきた彼らを歓迎しましょう。
つまり、この流行は大いに利用しましょう。
長いこと作業着として一段下に見られていたジーンズは、
今では完全に市民権を得て、ほとんどの場所へ着ていけるようになりました。
スポーツウエアも、やがて同じようになるでしょう。
どんな高級ホテルも、シャネルのスニーカーは拒否できないでしょう。

考えてみれば、
アクセスできない服など、ないも同然なのです。
どんなにお高くとまってみたところで、
手の届かない服など、私たちを変えることはできません。
着ることができる服こそが、力を持っています。
そして、「ふつうの私たち」が欲するのは、まさにそれです。

機能性とデザインは両立し、私たちはそれを手に入れることができるようになりました。
接近したのはファッションとスポーツウエアだけではありませんでした。
「ふつうの私たち」と「優れたデザイナー」もまた、
近付きました。
この円満な関係は、これからも続くでしょう。
もう後に戻ることはできません。


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2014年9月1日月曜日

スリット

スリットとは切れ目のことで、
洋服の場合は、特にタイトスカートの後ろ中心に、
歩きやすくするためのスリットが有名です。
しかし、このスリットですが、開きに用いられるスリットのように、
動きやすさ、着やすさなどの機能のために用いられるほか、
デザインとしてわざと入れる場合もあります。
そして、最近、デザインとしてのスリットがふえています。

たとえば、
タイトスカートのスリットを脇から前よりに持ってきて太ももあたりまで深く入れる、
ドレスの後ろ中心をファスナーでしめずに、スリットにして開けたままにする、
肩線を少し開けて肩を見せるようにするなど。

そして最近、特に多いのは、
ボディの前身頃の中心線が大きく開いたタイプです。
シャツやニットの前中心の深い切り込み、
それから、これはもはやスリットと呼びませんが、
ドレスやジャケットの前中心をV字になるように、
開けたままにするスタイルです。

ポイントはどれも、深く開いたその隙間からは素肌が見えているということ。
ドレスやジャケットの胸元は深くV字に開けたままで、
下には何も身につけず、素肌を見せます。

このように、あらゆるところに深く切れ目を入れて素肌を見せるスタイルが、
ここのところ多く出てきました。
これは、シルエットではなく、細部のデザインの流行で、
これからもっと拡大していくでしょう。

ファッションに求められるのは、
見慣れぬこと、
意外性、
そして驚きです。
この、至るところに切り込みを入れて、
いろいろなところから少しだけ素肌を見せるスタイルは、
そのファッションの求めるところを見事に実現しています。
その隙間から見える素肌は、
ふだんは見せていないような部分であり、
また、意外性に満ち、見るものの視線を、
知らぬ間に引きつける効果を持っています。

ファッションにおいて、
あからさまに肌を見せるということ、
ひいては、あけすけで、意図を持った性的表現は、
かえって逆効果です。
それは下品と呼ばれます。
下着が見えそうなスカート丈や、
ごくふつうのブラジャーが胸元から見えていることは、
おしゃれの反対側にあるものです。
なぜなら、そこには驚きも、意外性もなく、
性的に引き付けたいという、見え透いた意図がはっきりわかるからです。
それはモードなどではなく、
悪趣味で、夢見の悪そうな、偽装です。
他人から何かを奪ってやろうとする人は、おしゃれな人ではありません。

洋服の縫い目の、本来ならつながっているべきところがつながることなく、
切れているというそのことだけでも意外性があるのですが、
そこから見えるのが、本来は見えないはずである素肌であるということが重要です。
超ミニの丈のスカートから見える太ももではなく、
本当は見えないはずの、長い丈のスカートから、
太ももが少しだけ見えるから、そこに価値が生まれるのです。
それは最初からわかりきったミニ丈から見える太ももよりも、
はるかに想像力を刺激します。

ファッションは、想像力を働かせる余地を与えないような、
明らかな意図が、大嫌いです。
プレゼントが薄紙に包まれ、
箱に入り、
美しい包装紙に包まれ、
リボンがかけられるほど、
もらう側の想像力を刺激するように、
その中身、
つまりファッションにとっての意図が、すぐわかってしまってはだめなのです。

その意味においても、
この、至るところにあらわれる、意外性に満ちたスリットは、
冬の装いにおいて、より一層、その力を発揮するでしょう。
寒いので、すべての開きが閉まっているのは当たり前。
しかしそこで、ほんの少しでもどこか意外なところにスリットがあって、
そこから素肌が見えたなら、
そこにおしゃれが生まれます。

寒くても、それをあえて選ぶのがおしゃれな人。
それは機能ではないのです。
それは見る人に驚きを与えるための小さな仕掛け。
そのためには少しの寒さを我慢しなくてはなりません。
寒さや不便さを我慢しても、あえてそれを着る。
それもプレゼントの一種です。
おしゃれな人は、決して奪う人ではありません。
おしゃれな人とは、つまるところ、誰かに何かを惜しげもなく与えられる人だということです。 


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2014年8月25日月曜日

ワードローブに何を付け足すか

「クローゼットの見直しを」のコラムでは、
題名どおり、現在あるワードローブの点検、見直しを提案しました。
その中で、ワードローブのうちの大半は、
ほとんど着ていないという話を書きました。
ほとんど着ないようなものを買ってしまったということは、
つまり、失敗です。
ほとんど着ない服の数は、いわば負けの回数です。
しかし、失敗も悪くはありません。
失敗したのなら、そこから何かを学び、次は失敗しなければいいだけです。
では、失敗しないためにはどうしたらいいでしょうか。

クローゼットを見直しし、
現在持っているワードローブの全体像を把握したのなら、
何が必要なのか、わかるはずですなのですが、
実は、本当に必要なものが何なのかは、
多くの人が理解していません。
理解していないから、本当は必要でないものを買い足します。
その繰り返しにより、死蔵ワードローブができ上がります。

本当に必要なものとは、
クローゼットにかけられているだけではなく、
実際に着るもの、そしてその回数がそこそこ多いものです。
着る機会が多ければ、それは適度に劣化して、
やがて納得のいく形で捨てることができます。
服の一生を考えたとき、
デザインされて、生産されて、店頭に並んで、
買われて、誰かのクローゼットに入り、
何回も着られて、
擦り切れて、汚れて、破れて、
そして役目を果たして終わっていく、
このサイクルが確立すれば、問題はありません。
しかし、多くの服は、クローゼットに入り、
数回着てそのままそこに、という状態でサイクルを止めています。
そうではなくて、その先のサイクルまで進むもの、
何回も着て、納得いく形で捨てられるものが、本当に必要な買い足すべきアイテムです。

ここでは、クローゼットの整理が終わって、
全体を把握している状態であるという前提でお話しします。

まず、全体を把握したら、ワードローブ全体の構成のバランスを確認します。
枚数についての基本の考え方は、多い順に、
トップス(インナー)、
ボトムス、
ジャケット類、
コート類、
となります。
このバランスが崩れると、おのずと死蔵品がふえていきます。
たとえば、ジャケットを30枚持っていたとしても、
それらは万遍なくは着ていないはずです。
ジャケットは毎日取り換えるのに、インナーがいつも同じということもあり得ません。
そうして、あまり着なかったジャケットは、捨てるに捨てられず、
年がたつにつれて、どことなく時代遅れのシルエットとなり、
どうにもならない存在になります。
まずは、全体のアイテムの構成比率を整えましょう。

次に色です。
クローゼットを整理する際に、色別に分けるよう書きました。
色別に分ける理由は、コーディネイトを簡単にするためです。
3色ルールを実施するためにも、
色をそろえておくことは必須です。
色がそろったら、次はその中で何が足りないかを見てみます。
いつでも簡単にコーディネートを完成させるためには、
自分のいつも着る基本の色で、1色だけのコーディネートができるように、
アイテムをそろえておく必要があります。
たとえば、紺だったら、
紺のコートやジャケット、
紺のインナー(Tシャツ、シャツ、セーター)、
紺のボトム(パンツ、スカート)をそろえておき、
1色でコーディネートできるようにしておきます。
こうしておけば、インナーをほかの色に取り変えるだけで2色コーディネートに、
小物にさし色を足すだけで3色コーディネートになります。
自分の基本色が2色、3色とあるなら、その色の分だけアイテムをそろえます。
黒なら黒だけ、白なら白だけ、グレーならグレーだけでひとそろえを作ればいいということです。

また、自分が決めたさし色に使う色についても、
アイテムをそろえます。
赤をさし色にすると決めているのなら、
赤いバッグ、赤い靴、赤い靴下やタイツ、赤いストールなど、そろえます。

構成比を整えて、
1色コーディネートができるようにアイテムをそろえ、
さし色で小物を統一させる、
ここまでチェックの第一段階です。
ここで欠けているものが、次に買い足すべきものになります。

では、最後に最も重要なポイントです。
次に買い足すべきものは、
いつでも、どんな状況でも、
自分が最も好きなものであるべきです。
クローゼットを見直したときの状況を思いだしてみてください。
ほとんど着ていないものとは、
結局、たいして好きでもない、どうでもいいものではないでしょうか。
それに比べて、いつも着ているものとは、
とにかく自分が好きなもの、
着ていて心地いいもの、
自分らしいと感じられるものではなかったですか。

もちろん、予算もありますし、必要なものというのもあります。
それでもなお、もう二度と失敗したくないのなら、
自分が最も好きと思えるもの以外は、買うべきではありません。
失敗の理由は、その中途半端な好意です。

もう中途半端な好きなものを買い続けるのはやめましょう。
ほとんど着なかった服たちが、それは失敗なのだと教えてくれたはず。
本当に好きなものがなかったら、出会うまで我慢して、
今持っているものを使って、何とかしのぎましょう。
本当に好きなものとは、いつもなぜか着てしまう、
着用回数の多い、その服です。
それ以外は、すべてどうでもいいもの。

どうでもいいものを寄せ集めて作った、
つぎはぎだらけのワードローブは、もう要りません。
端から端まですべて大好きなものだけで、
クローゼットを埋めましょう。

不思議なことに、
中途半端に好きになったものは、
自分でいろいろ理屈を考えて、頭で好きになったものだけれども、
本当に好きになったものは、理屈などなく、
心が選んだものです。
心が選んだものは、自分が選んだというよりは、
選ばされたもの。
心はそれしか選べない。
それは自分の頭脳を超えて、
もっと違うところからの呼びかけにハートがこたえて選んだものです。
そんなものだけが並んだクローゼットなら、
もう二度と死蔵品は出ないはず。
選んだものではなく、
選ばされたもの。
それを貫き通せば、クローゼットをあけるたびにうれしくなります。
なぜならそれはすべてが生きているワードローブだから。
生きているワードローブと一緒に生きていけば、
それだけでハッピーになるはずです。

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2014年8月18日月曜日

コスト意識を持って服を買う

不景気です。
しかも、状況はよい方向へは向かっていません。
そんな中、何でも好きに買える人は少数派です。
ほとんどの人はそんな状況にないはず。
服の値段なんて気にしないで、
思いつき、ひとめぼれで服を買う時代は終わりました。
それぞれが、それぞれの基準でコスト意識を持たなければなりません。

まず、これは基本ですが、被服費の年間予算を立てましょう。
話を聞いていると、家計簿をつけていない人も数多くいます。
せめて、被服費に関してだけでも予算を立てて、
1年間、幾ら使っていいか、そして何に幾ら使ったのか、帳簿をつけましょう。

予算を立てるということは、その前に年間の購買計画が必要になります。
今年は何を買うのか、コートなのか、ジャケットなのか、
それともバッグなのか、消耗品は年間でどれぐらいかけるのか、
大枠を決めて、それに沿ってお金を使います。
コートやバッグは、思いつきで買うようなものではありませんから、
1年間を通して、探しつつ、吟味していけば、納得のいく、
失敗の少ない買い物になるでしょう。

消耗品のようなTシャツからコートまで、
被服費には価格にかなりの幅があります。
価格の低いものは、大量に購入しなければ、
それほど価格を気にする必要はありませんが、
高額なコートやバッグなどは、慎重にならざるを得ません。
そんなとき、目安になる考え方を紹介します。

まず1つ目。
減価償却の考え方で、そのアイテムを買ったら、1度着るたびにコストとしてはいくらになるか計算してみます。
たとえば、10万円のコートを5年間着る予定として、年間このコートを20回着るなら、
1回につき1000円です。
この1000円という額をどう判断するかは、それぞれの価値観によります。
その1000円を、11月から3月、平均1カ月に4回、コートを着ることに使うのか、
ケーキとお茶に使うのか、本を買うのか、それぞれ考え方が違うでしょう。

次にそれをクリアしたら、
もし、その高額なアイテムがいらなくなったら、
リサイクルショップで買い取ってもらえるか考えます。
リサイクルショップの査定はシビアです。
どんなに高額でも、人気のない、無名ブランドのジャケットなど、
二束三文でしか引き取ってくれません。
また、高額な真珠のネックレスも、1度誰かの手に渡ったら、
質屋では買い取ってさえくれません。
 ファッション・アイテムには、ほかのものとは違う価値観があって、
1年前の本物の真珠より、10年前のイミテーションのシャネルのパールのネックレスのほうが、価値が高いのです。
要らなくなったとき、リサイクル・ショップで納得のいく値段で買い取ってもらえるか、これは1つの指標です。

そして最後に、それを買うのと同じ額を稼ぐのにどれだけ労働したか考えます。
そして、それはその労働に見合うものか。
これこそ、人によって全く違います。
その判断は、それぞれが、それぞれの胸のうちに聞くしかありません。

これは私が考えた3つのクリアすべき項目ですが、
ほかにもまだ考えられる指標があるかもしれません。
とにかく、自分なりの判断基準を設定して、
それをクリアしたなら、高額なものを買う許可を自分に出しましょう。

予算を立てて、
自分なりの判断基準を持って、
あとは買い方です。
相変わらず、服や、その他のファッション・アイテムの
市場における需要と供給のバランスは、
完全なる供給過多です。
売りだされたその時点での価格の半分は、
「新しさ」の値段です。
しかも、その「新しさ」はせいぜい3カ月から半年のもの。
その「新しさ」が欲しい、必要なら、それを買えばよいですが、
そうでない場合、「新しさ」は必要ありません。
優れたデザインのものは、3カ月や半年で腐ったり、
劣化するものではありません。
売り切れてなくなるものは、ほんのわずかです。
多くのものは、半年たってもまだ、余っています。
それが今の現実です。
コレクションで発表されたものと同じドレスも、
1年半もたてば、3分の1の価格まで落ちます。

ワードローブを賢く構築して、
予算を立て、コスト意識を持って買い物すれば、
被服費の無駄はなくなります。
着ないものは、その結果、買えないか、
買わないか、そのどちらかになります。

私たちが削るべきでない出費は、ほかにたくさんあります。
命にかかわるものは、削るべきではありません。
服のために、命が削られるのなら、
それはおかしい。

これまで服を買う基準は、
かわいい、欲しいなど、
感情と欲望からなされたものでした。
しかし、これからは、
そのときだけの感情、欲望の言うままではなく、
もっと遠くから、全体を把握する、
思考の力が必要です。

もちろん時代は変わります。
この不景気も、いつかは終わるでしょう。
しかしそれまで、とにかく私たちは、
自分の欲望から自分を守らなければなりません。

コスト意識を持って服を買うことは、
そのための1つの方法です。
それは、自分を守るためにもっとも適した、
そして、もっとも賢い方法です。
欲望は黙るでしょう。
その結果、あなたは欲望との戦いに勝ち、
そして助かるでしょう。

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2014年8月4日月曜日

リゾートのシーンでの衣装

ある程度の長いお休みがとれたなら、
どこかリゾートへ旅行する方も多いだろうと思います。
リゾートであるからには、普段の日常の見慣れた風景とは違う場所に立つことになります。
つまり、シーンがいつもとは違うのです。
シナリオ風に書けば、こんなふうになります。

○夏の海辺のリゾート地・海に面したバルコニーのあるホテルのロビー・午後
   白い壁のロビー。
   南国らしい色鮮やかな花が飾ってある。
   夏らしいドレスで着飾った女性やジャケットを着た男性が談笑している。
   華やかな雰囲気。
   あけ放たれたドアから、ボストンバッグを持った主人公が入ってくる。

さて、このシーンをイメージできるでしょうか。
これは、たとえば海辺のリゾートですが、高原の場合も、湖のほとりの場合もあります。
そして訪れるのは少し高級なホテルの場合もあれば、山小屋や民宿の場合もあります。
とにかく背景が違います。
背景が変わってくると、似合う衣装も変わります。
リゾートでの衣装を考えるときに必要なのは、その背景に似合う衣装を選ぶということです。

まず、海か山かで違います。
ホテルならヒールのサンダルが似合いますが、
気軽な民宿ならビーチサンダルが似合います。
山小屋だったら、登山用のウエアですし、
高原のホテルだったら、日差しを避けるためのつば広の麦わら帽子が似合います。

考慮するのは、風景だけではありません。
ほかの登場人物とのバランスも大切です。
高級なホテルに、Tシャツ、ショートパンツ、ビーチサンダルでチェックインしたら、
それはやはり似合いません。
夏の緑の美しい高原のホテルに、黒ずくめで入っていくのも似合いません。
まわりの人たちが、きれいな格好で来るようなところでしたら、
やはりそれに合わせる必要がありますし、
もっとくだけた民宿のような、夏の普段着の延長でも大丈夫なところでしたら、
それに合わせたほうがやはりよいです。

合わせるのはまず色合い。
そしてスタイルです。

色もスタイルも、自分の顔やスタイルに合うかどうかだけで決めるのではありません。
もっと引いて見るのです。
1枚の写真のように、
ドラマの1シーンのように、
鏡の中だけではなく、もっと大きな絵の中で、
想像力を働かせて、これから行くシーンの中で、
主人公が何色の、どんなスタイルだったら引き立つのか、
それを考えます。

夕食はどこでとるのか。
ホテル内のレストランだったら、和食なのか、洋食なのか、
どんなインテリアで、どんな照明なのか、
ほかにはどんな人が食事をしているのか、
キャンプ場に行ったなら、どんなスタイルで、どんな食事をするのかと、
すべて想像してみます。
そして、その中で似合う色とスタイルは何なのか、
自分なりに考えてみます。

ここで気にするべきなのは他人の目ではありません。
1枚の写真を撮るときのフォトグラファーの視点、
またはドラマの1シーンを撮るときの映画監督の視点を持った、
自分の目です。

服を買うときは、それは近視眼的に選んだほうがいい。
けれども、いつもとは違う背景に身を置くときは、
もっと引いた視点を持つといいのです。
そうなると、重要なのは、それがどこのブランド品か、
そのパールは本物か偽者か、ということではありません。
あくまでも、その大きな絵の中にふさわしいかどうかということのほうが重要です。
誰も近くに寄ってきて、あなたの服やジュエリーをしげしげと品定めする人はいません。
リゾートで出会うのは、毎日顔を見る相手ではありませんから、
あなたの普段着など知りません。
判断の基準は、その場に合っているかいないかだけです。

ホテルのロビーのゆったりしたソファに座っている自分の姿の写真を撮ってみてください。
そのホテルの雰囲気にその色は、そのスタイルは合っていたでしょうか。
キャンプ場のバンガローの前で写真を撮ってみてください。
選んだその帽子と靴下は、その風景にお似合いだったでしょうか。

舞台はリゾート地。
それは日常から離れた場所。
普段あらわれない自分と出会うのも、そんな場所でしょう。
普段とは違う色とスタイルで、普段はしないような振る舞いで、
自分の知らなかった自分に出会う。
自分が主役のドラマにふさわしい、
リゾートのシーンの衣装とは、主人公の違う一面を見せるためのもの。
いつもと同じだったら、ドラマにはなりません。
旅行に行った前と後では日常が変わるような、
新しい自分に出会えるような、
後から、あの素晴らしい出来事が起こった日にはこんなドレスを着ていたと思いだせるような、
そんな印象的な人生の1シーンにふさわしい衣装を選びましょう。

主人公である私たちは、それを決める権利を持っています。
その権利を行使するのみです。
美しいドレスを着た、その思い出のシーンのイメージは、
生涯を通して、私たちを励まします。
それだけが奪えないもの。
それだけが永遠に輝きを失わない、
死んでからもなお持っていける、私たちの本当の財産です。

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2014年7月29日火曜日

猛暑対策とおしゃれ

衣服を身につけることの第一義的な意味は暑さ寒さを防ぐことにあります。
装飾や個人であることの認識はあくまでその後の問題で、
まずは暑さ寒さを防がないことには意味がありません。

さて、毎年、猛暑日がふえていく日本の夏ですが、
おしゃれがどうだこうだ言う前に、この暑さから身を守らなければなりません。
暑さから身を守るためには、以下のようなことが重要になります。

まず、涼しい素材の服を選ぶこと。
汗を吸い取り、しかもすぐ蒸発させることができる代表的な素材は麻です。
続いて麻と綿の混紡、また、暑さを防ぐために開発された機能性のある化学繊維も涼しいです。
一方、真夏にお勧めできないのはごく一般的なポリエステルやアクリル。
ポリエステルはシフォン素材などもあり、透けているため見た目は涼しげですが、
決して涼しくはありませんので、気をつけるべき素材です。
レーヨンはポリエステルほど暑くはありませんが、
水に弱い素材ですので、大量に汗をかく夏向きではありません。
レーヨンの原料は紙と同じパルプですので、水に濡れると、
紙のように固くなり、また縮みも見られます。ですから真夏のレーヨンは避けたほうが無難です。
最近、少しずつ見られるようになったリヨセルですが、
リヨセルは吸湿性、速乾性があるため、真夏でも着られます。
いいとも悪いとも言えないのがシルクとウール。
シルクは涼しいのですが、汗じみに弱いという欠点があります。
大量に汗をかかない室内着としては、真夏のシルクは悪くありません。
ウールも汗を吸収し、熱を遮断する性質があるので、夏は案外涼しいです。
ただ、これもヨーロッパの夏にはいいと思いますが、
今のような日本の高温多湿の地域には向かないでしょう。

次に、体にぴったりフィットするものではなく、
風をはらむようなシルエットの服を着ること。
体と衣服の間に空気が通り抜けるようなシルエットでなければ、
暑さは防げません。
真夏はスキニー・ジーンズよりも、ふわっとしたシルエットのスカートのほうが涼しいです。

最後に露出との関係です。
室内や日陰にいるとき、肌の露出度は高いほうが涼しく感じられますが、
日差しが強い場合は、逆に肌を露出していると暑さが増します。
気温が高く、日差しが強い日は、
露出部分を少なくし、上記のような素材で風をはらむシルエットのものを着たほうが、暑さをしのぐことができます。
これは砂漠など、日差しの強い地方の衣装を思い浮かべればわかることですが、
いくら暑くても、日差しが強い場合は体を露出しないほうがよいのです。
また、頭に直射日光を当てるよりも、帽子をかぶったほうが暑さ対策になります。

以上のことを踏まえると、
ポリエステルのぴったりしたシルエットのタンクトップに、
コットンとポリエステル混紡のホットパンツ姿、サングラスよりも、
麻100パーセントのゆったりしたシルエットの丈の長いワンピースに帽子をかぶるほうが、真夏の暑さは防げるということになります。

これらをクリアした時点で、初めてその上でおしゃれに見えるにはどうしたらいいか、先に進むことができます。

真夏といっても、シーンはいろいろです。
海なのか、山なのか、都会なのか、高原のリゾートホテルなのか、
その背景によって、似合うおしゃれは変わってきますが、
しかし、どこにいたとしても配慮すべきなのは、涼しげに見せるということでしょう。
真っ黒よりも、ブルーからグレーのグラデーションのほうが涼しげですし、
ペールトーンと言われるシャーベットのような色合いも夏向きです。
もちろん白は夏に外せない色です。

そのほかにできるのは、透明感のあるアクセサリー。
クリアクリスタルやダイヤモンドなど、氷を想像させる透明な石、
クールなシルバーなど、冷たさを連想させる素材は、それだけで涼しく見えます。

また、外から室内に入ったとき、
羽織っていたものを脱いだときに見える、
日焼けしていない白い肌も、
あたかもそこだけが雪のように白く、冷たさを感じます。

「涼しげ」というのは、実際に涼しいかどうかではなく、
とにかく目に涼しさ、冷たさを与えられるかどうかの問題です。
真夏は、氷やシャーベットやゼリーを思い出させるような、
そんな素材と色合いを、目も欲しがっています。
ですから、私たちはそれを与えればいいのです。
そう考えると、涼しげに見える方法は、ほかにもあります。
逆に避けたほうがいい、暑苦しく見える色や素材もわかってくると思います。

しかしそれでもやはり、猛暑の夏のおしゃれは二の次の問題です。
とにかく自分が倒れないのが一番大事。
そのためには、ちょっとぐらい変な格好をしたところで、いいではありませんか。
暑さで倒れそうな真夏と、寒さで凍え死にそうな真冬は、
おしゃれのことはちょっと脇に置いておいて、
暑さ寒さ対策にいそしみましょう。
それは免罪符です。
誰からも非難されることはありません。
生きていないことには、おしゃれもできません。
おしゃれより、自分の命を守ることのほうがよほど大事です。

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